日本で古くから使われてきた「手ぬぐい」ですが、皆さんは普段生活の中で使うことはありますか?
「手ぬぐいの日」という記念日まであるのに、お祭りの時など決まったタイミングでしか使わないという方も多いかと思います。
地味に思われがちな手ぬぐいですが、使い道が多かったり、長持ち・再利用できることから、改めて多くの人から注目されている和アイテムです。
今回はそんな手ぬぐいについて見ていきましょう!
手ぬぐいとは
手ぬぐいとは平織の木綿の布を切って作ったもので、その特徴としては端を縫わずに切りっぱなしになっていることが挙げられます。
なぜ手ぬぐいの端が切りっぱなしなのかというと、その方が洗ったときに早く乾くから。
タオルなどはほつれないように端が縫われていますが、端を縫うと生地が重なる分、乾きにくくなります。
その点、切りっぱなしの手ぬぐいは乾きやすいということなのです。
さらに、手ぬぐいはその速乾性から雑菌の繁殖を防ぎ、衛生面でも大変優れています。
また、端が切りっぱなしなのですぐに裂くことができるため、江戸時代には包帯や鼻緒が切れたときの応急処置にも使われていました。
今ではあまり見られない用途ですが、人々の生活に良く根付いていたことが伝わりますね。
手ぬぐいの歴史
「手ぬぐいはいつ誕生したのか?」ということについてはさまざまな説がありますが、古くは奈良時代から神仏像などの清掃に使われていたといわれています。
布自体が貴重なものであったことから、平安時代には祭礼時の装身具として、身分の高い人が身に付けていました。
鎌倉時代になると庶民にも徐々に浸透していき、室町時代には入浴後の濡れた体を拭うためにも活用されました。
また当時、庶民は麻、貴族は絹の手ぬぐいを使用していたそうです。
そんな手ぬぐいですが、「手ぬぐい」と呼ばれ、綿で作られるようになったのは江戸時代のこと。
それまで綿は、中国から輸入される高級品でしたが、江戸時代に綿花の栽培が日本でも盛んにおこなわれるようになると、綿の手ぬぐいが広く浸透していきます。
その頃には、手ぬぐいは実用性だけでなく、着飾るためのおしゃれな小物としても、庶民の日常生活に受け入れられるようになります。
手ぬぐいは自分で使う以外にも贈答用としても重宝され、歌舞伎役者や相撲力士などが名前や家紋を入れた手ぬぐいを名刺代わりに配ったり、商店が屋号を入れた手ぬぐいを顧客に配るようになりました。
このように、手ぬぐいが庶民の生活のいたるところに広まったため、手拭染屋と呼ばれる専門の染屋も登場し、前述したようなオリジナルの手ぬぐいはそこで染められていました。
さらに時代が下り明治時代に入ると、「注染」という新たな染色技術が発展し、より複雑なデザインの手ぬぐいも作られるようになりました。
注染とは染色の方法の一つで、染めない部分に型紙で糊を塗った後、染める部分の輪郭に糊で土手を作り、土手の内側に染料を注いで布を染める方法です。
注染の登場で、一度に複数の色を染めることができるようになりました。
サイズや種類
手ぬぐいにもサイズや種類があるのぞご存じでしょうか。
使う場面や自分好みの手ぬぐいを見つける助けになるかも…?
サイズ
もともと、反物を裁断して作られる手ぬぐいに、決められた規格はありませんでした。
これは、一反の寸法が反物によってまちまちだったためです。
現在、私たちがお店で見かける手ぬぐいのサイズは、長さ約90㎝、幅34~36㎝の三尺手ぬぐいと呼ばれるものが一般的です。
この長さは用途によっても変化します。
そんな手ぬぐいをサイズ別にいくつかご紹介しましょう。
種類
手ぬぐいは糸の太さや生地幅によって、「総理・文生地」と「岡・特岡生地」の2つの種類にわけられます。
手ぬぐいの柄と染め方
歴史の長い手ぬぐいには様々な柄や染め方があり、その意味も多種多様です。
ここではそんな手ぬぐいの一部をご紹介します。
手ぬぐいの柄
手ぬぐいの柄の代表的な物には豆絞りという水玉模様や、矢絣、麻の葉などの伝統模様があります。
これらの伝統模様には魔除けや良縁の意味が込められています。
手ぬぐいを選ぶときは、使う時の状況や柄の意味も考えるのが大事です。
豆絞り
豆絞りの模様には「子孫繁栄」という意味があります。
一粒の豆からたくさんの実がなるように、どうか子供をたくさん授かりますようにという願いが込められているためです。
また「魔除け」や「無病息災」の意味もあると言われています。
矢絣(やがすり)
矢絣は古くからよく見られる柄の一つ。
「的を射る」ということから、矢は縁起がいいとされています。
また、矢は一度飛ばすと戻ってこないことから結婚する女性が出戻らないように「幸せな結婚」の縁起物にも使われます。
そのほか、破魔矢にあやかって「魔除け」や「邪気除け」の意味もあります。
麻の葉
古来、麻は神聖なものとされており、麻の葉柄にも「魔除け」の意味があります。
また、成長が早い麻の葉は、赤ちゃんがすくすく育つように願いを込め、子供服やおくるみの柄としてよく使われています。
手ぬぐいの染め方
捺染(なっせん)…
染める色ごとに型を作り、布の上にその型を置いて染料をヘラで捺しつけて染める技法です。
布の表面を染色するので、裏表のある手ぬぐいになります。
捺染の手ぬぐいは洗濯をしても色落ちしにくいのが嬉しいポイントですね。
他にも細かなデザインにも対応できるため色柄の種類も豊富です。
注染(ちゅうせん)…
布の染めたくない部分に型を置き、防染のりを塗った後、のりの付いていない部分に染料を注ぎ色付けする技法。
デザインの細部に、にじみが出やすく細かいデザインには向かないが、ぼかしやにじみをデザインの一部として活かすこともできるので味のある柄ができます。
また、染料を注いで染色されるため裏面まで色が通ります。
洗濯で少し色落ちするため、使い込むとビンテージのような風合いとなるのも注染の代表的な特徴でしょう。
顔料プリント…
顔料でデザインを布に印刷する技法。
顔料プリントは伝統的な手ぬぐいの染め技法ではありませんが、色落ちがなく細かいデザインに向いています。
ただデメリットとして、顔料によって布の手触りが硬くなることがあります。
手ぬぐいの使い方
手ぬぐいは汗をぬぐう、手を拭くなどのハンカチやタオルのような形で使われることが多いです。
ですが、アイデア次第で使い方の幅が広がります。
そんな素敵な使い方の一部をここでご紹介します。
洗面所で使用方法
手ぬぐいの基本と言えば先述の通り拭くことです。
速乾性が活きるためフェイスタオルや手を拭くタオルとして使うのに最適です。
また、タオルより薄手で嵩張らないため収納スペースを取らないのも嬉しいですね。
他にも、薄くて長い特徴を生かしてヘアバンドの代わりにすることもできます。
古くなった手ぬぐいであればお掃除や洗面台の水を拭き取るのにも便利。
その際は使いやすいサイズに切って使うのもいいでしょう。
食卓での使用方法
意外に思われるかもしれませんが食卓にも手ぬぐいが活躍する場面が多くあります。
ランチョンマットやテーブルセンターとして使えば、食卓に彩を加えることができますし、ナプキンとして使用すればおしゃれ度が一気にアップします。
もちろんテーブルふきやお手拭きに使うのもいいでしょう。
また、水に濡らして絞った手ぬぐいをごはんや酢飯の上に被せれば保湿にも使えます。
収納やインテリアとしての使用方法
色柄が豊富な手ぬぐいはおしゃれな収納アイテムとしても注目されています。
例えば、収納かごやケースの目隠しとして使ったり、パソコンなどの電化製品や姿見などのホコリ除けとして使うことができます。
さらに近年ではタペストリーとして手ぬぐいを飾るという方も増えているそう…。
手ぬぐいをかけるための棒も販売されているので、お気に入りの手ぬぐいがあるという方は、飾ることで気分も晴れやかになるのではないでしょうか?
手ぬぐいには、たくさんのデザインがあるので季節やイベントによって変えれば家族みんなで楽しむこともできますよ。
家の外での使用方法
外出先でも手ぬぐいは役立つ場面がたくさん!
私が一番便利だなと感じたのは、ペットボトルなどの冷たい飲み物を持ち歩く時。
水筒であれば起きませんが、ペットボトルなどの冷たい飲み物は結露によって表面が濡れてしまいます。
そのまま鞄に入れれば中身が濡れてしまいますが、手に持って歩くには邪魔ですよね。
そんな時手ぬぐいで包めば、薄手で嵩張らない上にすぐ乾くのでとても衛生的!
また手ぬぐいはファッションの一部としても活躍します。
首に巻けばスカーフに、頭に巻けばおしゃれなヘアバンド大変身!
バッグに結んでワンポイントとして取り入れれば、世界で一つだけのバッグを作り出すこともできるので、気分が上がる事間違いなしです。
緊急時の使用方法
起きないことが一番ですが、ケガをしたときや災害時にも手ぬぐいは役に立ちます。
薄くて長い手ぬぐいは包帯の代わりとして使ったり、患部を冷やす時に保冷剤を包むのに最適です。
骨折した際は三角巾の代わりにもなります。
また災害時は煙などが起きることも多いですが、煙を吸わないために口に当てればマスク代わりにもなります。
手ぬぐいのお手入れ
手ぬぐいは他の衣料品同様に洗濯機で洗うことができます。
ただ、ポイントを何点か抑えるだけで長持ちさせることができるのです。
洗い方
手ぬぐいは染物のため、使っているうちにどうしても色落ちしてしまいます。
そのため、手ぬぐいを始めて洗う際には色落ちに注意して洗っていく必要が…。
特にお湯で洗うと色が落ちやすいため、なるべく水で洗いましょう。
また、色移りを避けるために淡い色の物とはいっしょに洗わない方が無難ですね。
洗った後は放置せず、すぐに干すことも色移りを避けるポイントです。
直射日光は色あせや劣化の原因となりますので風通りの良い日陰で干してください。
端がほつれたとき
手ぬぐいは端が切りっぱなしになっているため洗濯すると糸がほつれてきます。
余分なほつれが出てきたら丁寧にハサミで切り落としましょう。
この時に引っ張ると手ぬぐいにシワが寄ってしまうので、引っ張るのはNG。
ただ、手ぬぐいのほつれは洗っているうちにだんだん少なくなってくるので安心してくださいね。
まとめ
手ぬぐいは、生地が薄いため速乾性が高く衛生面でも優れていることを知っていただけたでしょうか?
色柄豊富でおしゃれなものも多いため、思わずコレクションしたくなってしまいますね。
お祭りなどの決まったタイミングでしか使わないという方もハンカチ代わりに1枚持ってみたら便利さにハマること間違いなしです!
お気に入りの手ぬぐいを見つけて毎日の暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか。