クリーニングから帰ってきた品物には「番号が振り書かれている細長い紙(タグ)」がついているのをご存じでしょうか?
よく見てみると数字が書かれたもの以外にもいろいろな色や種類の物があります。
今回は「タグが何のためについているのか?」、「どんな紙が使われているのか?」をご紹介します。
何のためについているの?
そもそもクリーニングタグとは何のためについているのでしょうか?
まずは代表的な役割について見ていきましょう。
クリーニング品の分別
クリーニング店に依頼品を持って行くと、まずは受付の人がどんな種類の品物なのか分別してくれます。
服の種類から素材、クリーニング方法、オプションなど分別方法は多岐に渡ります。
その情報をわかりやすく可視化するためにタグはつけられます。
十兵衛ではまず品物1点ごとに、写真のバーコードと番号付きのタグが割り当てられます。
番号付きのタグには下の写真のような、控え用の「子タグ」、品物につける「本タグ」の2つで1ペアのタイプもあります。
クリーニング店から工場へ正しい情報を伝えている
受付時は対面なのでシミに対する注文や、仕上がりの具合、追加の注文などを細かに伝えることができます。
しかし、クリーニング店は受付業務だけで、実際にクリーニングをするのは別の場所にある工場なことが殆どです。
そのときに細かな情報を伝える1番効率的な方法なのがクリーニングタグ!
タグが付いていることによって、従業員間でスムーズにお客様の要望や品物の正しい情報を伝達することができます。
取り違いなどのトラブルを減らすことができる
クリーニングが完了した品物は、受付したクリーニング店に戻されますが、そのときにクリーニングタグが無いと、どこに戻して良いのか分からなくなります。
工場には膨大な数の洗濯物が送られてきて、洗濯コースなどによってひとまとめにされるのでます。
そのため自分が出した洗濯物はバラバラになって洗浄され、完了したときに再度伝票番号とクリーニングタグの番号を照らし合わせながら仕分けるのです。
つまりクリーニングタグのおかげで紛失や取り違いなどのトラブルが無く、依頼品が自分の手元に戻ってくるわけですね。
タグを外してしまうと再仕上げしてもらえない事がある
クリーニング品が返ってきたらすぐタグを取り外す方も多いかと思いますが…ちょっと、待ってください!
クリーニングタグにはクリーニング後にも役割があるのです。
例えば依頼したシミが落ちていなかったり、シワが残っていたり、傷がついてきたなどの問題が起きたとき、このタグが付いたままでないと再仕上げの対応をしてもらえない事があるのです。
クリーニングタグはその店でクリーニングをしたという証になります。
なので外してしまうと不備があったとしても、クリーニングをしたお店の特定ができず保証対象外になってしまうことがあります。
返ってきた品物のタグはすぐに外さず、問題が無いかしっかり確認してから外すようにしましょう。
クリーニングタグの秘密
クリーニングタグは触ってみると少し特殊な質感で、力を入れないとちぎれません。
通常の紙より少し強度があるだけと思われがちですが、クリーニングタグに使用されている紙は普通紙とは異なる特殊なものです。
ここではクリーニングタグに使われている紙の秘密を見ていきましょう!
丈夫な紙素材”耐洗紙”
クリーニングタグは「耐洗紙」といい、洗っても平気な丈夫で強い紙が使われています。
通常、紙は水に濡れると繊維の繋がりが弱くなって破れてしまいますが、耐洗紙は濡れても繊維の状態が維持されるため破れることがありません。
その特性を活かし、クリーニングタグだけでなく、苗木・植木の名札としても活躍しているんですよ。
さらに水だけでなく強い圧力や薬品などにも強いので、クリーニング時にかかる摩擦や洗剤等にも耐えることができ、クリーニングタグに最適な紙なのです。
判別しやすいよう、様々なカラーの物がありますが、もちろん色落ちもせず印字適性にも優れているすごい紙なのです。
耐洗紙の特性を活かしてクリーニングタグは受付時点でホチキス止めされ、そのまま工場にてクリーニングされます。
「洗濯→乾燥→仕上げ」という工程全てを耐え抜ける強さがあるので、初めにつけた状態のまま手元に返ってくるのです。
ペンにも秘密が!?
クリーニングタグに手書きで文字が書かれていたことはありませんか?
受付時で要望があった場合や注意点があった場合、その情報を工場に伝えるためタグにペンで記載することがあります。
実はこの時使っているペンも普通とは違う特殊なペンが使われているのです。
通常のボールペンなどであれば水などで滲んだり消えてしまいます。
色落ちしたインクがクリーニング品についてしまえば大きなトラブルにも繋がります。
そのような事態を防ぐためクリーニング店では「ランドリーペン」という特殊なペンが使用されています。
これには、水やお湯、洗濯薬品でも滲んだり消えたりすることがない特殊なインクが使われています。
お客様と受付と工場の間で、しっかり情報共有するためになくてはならない存在です。
クリーニングタグの課題点
クリーニングとは切っても切れない関係のタグですが、課題点もあります。
お客様の声やクリーニングしている中で感じる、クリーニングタグの課題点はこの2つです。
取り外しが面倒
クリーニングタグはクリーニングに出したもの全てについてくるので、品物が多ければ多いほど取る作業も増えてしまいます。
また寝具類のような大型の品物や付属品が付いていたコートなどであれば、一つの商品に複数のタグが付いてくることも…。
普通の紙より強度がある分、ちぎりにくく一つ一つ手作業でとるのは結構手間です。
安全ピンで服にキズが付く
衣類の状態や形状によっては直接安全ピンで留められることもあります。
クリーニング店も品物を傷めないよう細心の注意を払っていますが、安全ピンを使うとどうしても穴が開いてしまいます。
対策として安全ピンを刺すのではなく通せるところにつけたり、できるだけ穴が目立たないような場所につけるなど工夫しています。
クリーニングタグは絶対についてくる
お店にとってもつける手間があり、課題点もゼロとは言えないクリーニングタグですが、着けないことはありません。
ただ、タグをつける場所を指定することや、引取の際に受付のスタッフと一緒に確認をして、問題が無ければ取ってもらうことができることがあります。
そうすることで先述した課題点の部分をクリアできることも…。
大切な衣類や高級品など通常の品物より丁寧に扱ってほしいという時は受付時にクリーニングタグをどこにつけるのか確認してみるといいでしょう。
基本的にはお店ごとに品物の種類によって、つけ方と場所が決まっていますが、クリーニング店によってはタグをつける場所を指定することができる場合があります。
ただこれら方法はすべてのお店が対応してくれるわけではありません。
そのためできるかどうか事前にお店に確認しておくといいでしょう。
また、宅配クリーニングでも備考欄に書いておいたり、メモを添えることで対応してくれる場合があります。
まとめ
気にしていなかった方も多いであろうクリーニングタグですが、実は重要な役割を担っていたということを知っていただけたのではないでしょうか。
クリーニングを円滑にトラブルなく進めるために絶対に必要なアイテムなのです。
また紙やペンも水や洗濯薬品に強い特殊なものが使われています。
これからはタグに何が書かれているか、どんな種類のタグがあるのかなど、ちょっと気にしてみると面白いかもしれませんね。