3回にわたる繊維の話もいよいよ最後になりました。
「化繊」なんていったりするけど、何からできていて、どんな特徴があるのか知らない方も多いと思います。
実は化学繊維にも天然繊維のように様々な種類があるのです。
そこで今回は意外と知らない化学繊維の種類や特徴をご紹介します。
前回までの天然繊維の話については下の記事をチェック!
化学繊維とは
「化学繊維」とは人工的に作られる繊維の総称です。
略して「化繊」だったり、人工的に造られるところから「人造繊維」と呼ばれる場合もあります。
加工できる機能(冷感、発熱、速乾、形状記憶など)が多くあり、安定して大量生産が行えるため、天然繊維の製品に比べ比較的低価格で購入できます。
一方、化石燃料や化学薬品を使用するため、環境汚染やアレルギーによる肌荒れを引き起こしやすいという問題点があります。
化学繊維は大きく2種類に分けられ「合成繊維」と「再生繊維」になります。
さらに細かく見ていくと、半合成繊維や無機繊維などがあります。
どんな化学繊維があるかを説明する前に、それぞれ化学繊維の特徴を見ていきましょう。
合成繊維
合成繊維は主原料が石油からなり、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの種類があります。
私たちが普段着ている服にも多く使われている繊維です。
強度、耐水性、耐薬品性、防黴性などに優れているのが特徴で、形状や製法を工夫することで様々な断面の形を持つ糸を自由に作ることができます。
半合成繊維
たんぱく質とアクロニトリルなどから作られた繊維で、アセテート、プロミックスなどがああります。
天然のものに少しだけ手を加えているので半合成として扱われており、合成繊維と再生繊維の中間的存在と言えるでしょう。
吸湿性がよく静電気が起こりにくいメリットがあります。
再生繊維
再生繊維は天然の木材などから精製されています。
現在製造されている再生繊維の大部分は再生セルロース繊維で、代表例としてレーヨン、キュプラ、リヨセルが挙げられます。
リサイクルを意味する再生とは異なるものなので、再生ポリエステルなどはこの部類ではありません。
無機繊維
繊維状の無機物質の総称を無機繊維と言います。
無機とは炭化水素(C〇H〇)を含まない物の事です。
※天然繊維の石綿(アスベスト)も無機物質の繊維ですが、無機繊維には含まれないことが多いです。
ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維などがあります。
耐熱性に優れ、防熱・防音などにも効果を発揮するため、主に建築物に使用されています。
一般衣類には向かないため産業資材分野で活躍することが多いです。
代表的な化学繊維
化学繊維にもいくつか分類があり、それぞれ全く別の特徴を持っていることを知っていただけたかと思います。
そこで次は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維から1つずつ代表的な素材を挙げていこうと思います。
皆さんの今着ている服のラベルを見たら同じものが使われている…というくらい、よく使われている物もあるので、ぜひご覧ください!
ポリエステル(合成繊維)
世界で最も多く生産される繊維で三大合成繊維の一つでもあります。
※残りの二つはナイロンとアクリルになります。
長繊維、短繊維ともに使用量が多く幅広い分野で活躍している繊維です。
伸びや耐摩耗性などの基本的な力学特性が優れており、多くの項目で平均よりも優れている繊維となっています。
比較的耐熱性も高く、熱可塑性であることから嵩高加工やプリーツセットなど各種熱加工を高温で行うことができ、安定したセットが得られます。
他の繊維との相性も良く綿、麻、羊毛、レーヨンなどとよく馴染み、混紡糸や複合素材として相手素材の長所を生かし欠点を補完します。
一方で疎水性の繊維であり吸湿・吸水性が低く、汗を吸いにくいので蒸れやすいです。
熱可塑性とは…
常温では変形しないが、熱をかけると溶けて、冷えると固まる性質の事を言います。
これは一度溶かして冷え固めても、再加熱することによって溶けて、さらに冷やすことで再度固めることができる性質があります。
つまり、何度でも発現させることができるのです。
私たちが普段利用するプラスチック製品や金属製品を作る上で利用されています。
チョコレートのようなものを想像するとイメージしやすいですね。
もちろん、衣料品にも熱可塑性は関係してきます。
繊維や糸を作る際、生地を加工する際、製品を加工する際などあらゆる場面で熱可塑性を利用した加工がされています。
例えばスカートなどのプリーツ加工は熱可塑性を利用して施す方法です。
折り曲げた状態で熱や蒸気を当てることで、綺麗なヒダや折り目が付いた状態にすることができます。
熱可塑性は何度でも発現する性質なため、この加工は水には耐久性がありますが、タンブル乾燥やアイロンなどの熱・高温には弱いです。
メリット
乾きやすい
吸湿性の低い素材で繊維の中に水が入りづらい構造をしています。
そのため水や汗が生地に触れてもすぐに拡散されて蒸発するのです。
この速乾性は肌が汗によってべたつくのを抑え、爽やかな着心地を維持してくれるので、スポーツウェアに多く採用されています。
保管しやすい
原料が石油であるため、虫が寄り付きづらい傾向にあります。
そのため比較的保管時は虫食い被害に遭いにくいです。
また、防虫剤による変色などの影響も受けづらいのでお手入れが簡単なのも助かりますよね。
しかし、食べ残しや汗汚れなど虫の餌になりそうなものがある場合は、ポリエステルであっても虫食い被害に遭うことがあるので注意が必要です。
保管前はきちんと仕舞洗いを行って虫の餌になる汚れをしっかり落としましょう。
シワになりにくい(防シワ性)
ポリエステルはシワになりにくい素材でもあります。
元の形状を保つ性質があるため、洗濯をしてもシワになりにくいのです。
もしシワができても耐熱性があるので、アイロンをかけてシワを取り除くこともできますよ。
デメリット
汚れを吸着しやすい
ポリエステル衣類の悩みで多いのは、ニオイや汚れです。
ポリエステルは汚れを吸着しやすい傾向にあり、洗濯では他の衣類からの汚れ移りに気を付ける必要があります。
そのためポリエステル衣類はこまめに洗いましょう。
洗う際は洗浄力の高いアルカリ性洗剤を使い、汚れを残さないようにするのが重要です。
静電気を起こしやすい
ポリエステルは強いマイナスの帯電繊維であるため、プラスの帯電のある素材との間に静電気が起きやすいです。
静電気は毛羽立ちや毛玉の原因にもなり、ホコリや花粉などの目に見えないゴミも付着しやすくなります。
静電気防止のためにも洗濯では柔軟剤を使うようにするといいでしょう。
アセテート(半合成繊維)
木材パルプ(アセチルセルロース)と酢酸の化合物を原料にして作られた繊維です。
酢酸の含まれる量によってアセテートとトリアセテートに分けることができます。
※ほとんど違いはありませんが、トリアセテートの方が比較的吸湿・吸水性が低いです。
木材パルプと酢酸を化学反応させることで、アセテートフレークを作ります。
その後、アセテートフレークから不純物を取り除き、できた紡糸原液を非常に細かいノズルから吐出させ、溶剤を熱風で蒸発し形成します。
綿やウールなどは天然素材から作られるため天然繊維に分類されますが、アセテートなどは原料こそ天然素材ですが、化学処理をして作られているため化学繊維に分類されます。
その用途は様々で、独自の光沢や風合いの良さから、服地や和装小物類・シャツ・裏地などに使われています。
衣類以外にもカーテンや傘に使われており、実はたばこのフィルターにもアセテート繊維が用いられているそうですよ。
メリット
環境にやさしい
木材パルプを原料として作られています。
天然由来の素材であるため人体への悪影響が少ないです。
化学繊維の多くが化石資源から作られるのに対し、アセテートは植物由来で循環資源であるため、環境にやさしいと繊維と言えます。
シルクのような光沢感がある
アセテートにはシルクのような美しい光沢感があります。
繊維の断面は雲のような丸みを帯びた形をしており、再生繊維のレーヨンにも似ている繊維断面をしています。
繊維断面が円形の繊維より、光をよく反射するためシルクのような光沢感やツヤのある繊維に仕上がるのです。
プリーツやシワ加工向き
熱可塑性があるのでシワ加工やプリーツ加工に向いています。
本来、天然素材であれば持ち合わせていない熱可塑性も、化学繊維に含まれるアセテートだからこそ持ち合わせているのです。
熱可塑性を活かすことでデザイン性の高い生地に仕上げることができますよ。
デメリット
強度が低い
アセテートは他の繊維に比べると耐久性が劣っています。
強く引っ張るなどは力をかけることは行わないようにしましょう。
また、摩擦にも弱いため、摩擦によって生地がダメージを受けてしまいます。
洗濯では強い力がかかったり、摩擦がおきやすいため注意が必要です。
手洗いが一番生地に負担をかけないのでお勧めです。
洗濯機を使う時は洗浄時間を短くして、脱水は控えるようにしましょう。
シワが付きやすい
シルクのような光沢感を持っているアセテートですが、シルクとは違い耐シワ性は持ち合わせていません。
洗濯などで濡れた状態でシワが付くと残ってしまうので、なるべくシワが付かないよう生地を伸ばして乾かすなど工夫が必要です。
マニキュアや除光液に注意
美しい光沢や風合いの良さからアセテートはレディース向けの服の生地としても良く使われます。
しかし、そんなアセテートとマニキュアや除光液は相性がよくありません。
マニキュアや除光液に含まれる薬品が反応して溶けるので、使用する時は誤って服につかないよう注意してください。
レーヨン(再生繊維)
シルクに似た光沢と手触りが特徴のレーヨンは上着の高級裏地や婦人用肌着などに使われています。
最近ではレーヨンのシャツも多く見るようになりました。
先ほどのアセテートと同じ木材パルプが原料です。
木材パルプを溶剤に溶かし液体にした後、機械の細い孔から押し出すことで繊維に再生します。
レーヨンは高価なシルクを人工的に造ろうとしてできた繊維です。
「光る糸」という意味で、日本では「人工絹糸」とも呼ばれていますよ。
メリット
ドレープ性に優れている
ドレープとは「優美にまとわせる」という意味です。
回った時にスカートやドレスの裾が綺麗に広がるとドレープ性がいい状態です。
動きに合わせてしなやかに流れるのでエレガントな印象を与えてくれます。
発色性がいい
レーヨン生地は染料がよくなじむので染色しやすく、鮮やかに色が出るので発色性がいいとも言われています。
染料との相性がいい事で衣類の色も鮮やかに出て、きれいな光沢を生み出すことができます。
消臭効果がある
レーヨンは弱酸性の特徴を持っており、汗などのアンモニア臭といったアルカリ性の臭いを、中和して消臭する効果があります。
ドレープ性に優れている事とあわせて、夏服にぴったりな素材ですね。
デメリット
水に弱い
パルプから作られているため化学繊維でありながら、紙と同様に水には弱いという特徴があります。
水を含んで膨らんだり、乾燥して縮んだりを繰り返すたびに繊維の強度が落ちていきます。
濡れるだけでもシミや縮みの危険があるので家庭での洗濯は難しいです。
弱酸性の特徴があるため、酸性の液体に弱い。
酸性雨が衣類にあたると、生地に穴が開くなんてことも…。
出来るだけ雨などで濡れるのも避けるようにしてください。
とてもデリケート
レーヨンは生地が弱いことで有名で取り扱いがとても難しい繊維です。
水に弱いだけでなく、熱にも弱く、シワや型崩れが起きやすい。
そのため、洗濯やお手入れは家庭では行わず、プロのいるクリーニング店に任せるのがおすすめです。
まとめ
私たちの生活にとても身近な化学繊維の事を知っていただけたでしょうか。
化学繊維でも環境や肌に優しい物があるのは驚きですよね。
記事で取り上げたもの以外にも様々な繊維があるので興味がある方は、ぜひ調べてみてください。
衣類の繊維の特徴を理解してこれからもおしゃれを楽しみましょう!