繊維

服の素材・繊維について知ろう~植物繊維って何?種類と特徴を解説~

皆さんは普段何の素材からできた服を着ていますか?

ラベルを見れば素材が書いてありますが、実際の見た目や特徴をよく知らない方もいると思います。

そこで植物からできる繊維、動物からできる繊維、化学的に作られる繊維について回を分けてご紹介します。

第一回目のこの記事では植物から作られる繊維についてお話ししようと思います。

素材によって得意・不得意が違うので、ぜひこれから服を買う時の参考にしてください。

天然繊維とは

天然繊維は主原料が天然素材のもので、「植物繊維」と「動物繊維」の2種類に分けることができます。

主原料が綿や麻などの植物性のものを「植物繊維」といい、熱や洗濯、摩擦に強い特徴があります。

一方、絹やカシミヤ、ウールなどが原料なものを「動物繊維」といいます。

動物の身を守る機能を持ち合わせているため、保温性や保湿性に優れていることが多く、防寒着によく使われる繊維です。

天然繊維の生地は自然界にあるもので作られており、赤ちゃんや敏感肌の人でも安心して使うことができるのが特徴です。

一方で、縮みやすく耐久性に難があるため、家庭ではお手入れしにくい物があったり、化学繊維の製品に比べると価格が高くなりがちなデメリットがあります。

下記の図は天然繊維の種類を大まかに分けたものになります。

動物繊維の方は別の記事で紹介するのでお楽しみに!

植物繊維とは

植物繊維には何があるかを見ていく前に、もう少し細かく植物繊維自体について見ていきましょう。

植物繊維」とは、その名の通り植物から採取できる繊維の総称になります。

植物から採取できるということは、もともと自然界に存在している繊維なので、埋めたとき土に還りやすいという特徴があります。

このことを生分解性といい、環境にやさしい物が選ばれる昨今、重要視されるようになってきました。

この植物繊維ですが、実は採取する部分によって別の繊維として分類されます。

分類には4種類あるのでそれぞれを簡単にご説明します。

種子毛繊維

植物の種子に生えている繊維です。

種子を保護したり、飛散を助ける役割があります。

代表としては、綿やカポックが挙げられます。

靭皮繊維

植物の茎から採取できる繊維です。

茎の木質部を取り囲む靭皮部に繊維が存在するので靭皮繊維と呼ばれています。

靭皮繊維の例としては亜麻や苧麻などのが代表的です。

麻の茎の構造

葉脈繊維

植物の葉や葉柄から採取される繊維です。

繊維が太くて硬いため、衣料品には適しません。

そのため、強さが求められるロープ資材などによく使用されます。

マニラ麻やサイザル麻が有名です。

果実繊維

名の通り果実から採取される繊維です。

一口に果実と言っても、身の内側の綿毛を利用するもの、果皮を利用するもの、果肉を利用するものなど様々な種類があります。

有名な果実繊維にはヤシやヘチマが挙げられます。

植物由来繊維

最近では「植物由来繊維」というものを耳にすることがあると思います。

実はこれ、植物とついているのに植物繊維とは全く異なるものなのです。

植物由来繊維とは植物から抽出した成分などを原料に作られる繊維のことで化学繊維であることが多いです。

植物を原料とすることで持続的で、環境配慮にもつながるので、「植物由来」という言葉が使われるようになりました。

代表的な植物繊維

実際に植物繊維には何があるかを見ていきましょう。

誰でも聞いたことがある物ばかりですので知ってることもあるかと思いますが、改めて見てみて普段の衣類を選ぶ参考にしてみてください。

綿(コットン)

アオイ科ワタ属の多年草「ワタ」の種子のまわりから採れる種子毛繊維です。

衣類だけでなくタオルやガーゼなど幅広く使われています。

繊維の断面を顕微鏡で観察すると、天然の「撚り」がかかりチューブをつぶしたような形なのがわかります。

衣類の保温性は布地が含む空気量によって決まりますが、綿は空気を多く含むことができるため、保温・断熱効果に優れています。

綿は繊維が長いほど高級になり最高級のものは35㎜にもなります。

ちなみに平均は28㎜程度です。

ブランド綿は数多くありますが、その中でもアメリカのスーピマ綿、エジプトのギザ綿、中国の新疆綿しんきょうめん世界三大コットンと呼ばれ品質が良く高級です。

特に新疆綿はトルファン地区で生産されるトルファンコットンが最高ランクの綿として有名です。

メリット

肌触りがいい

綿は種を守るための繊維ということもあり、ザラザラ・チクチクといった感触はほとんどありません。

他の素材では体感できないふんわりとした肌触りが特徴です。

直接肌に触れることが多い下着や肌着におすすめの素材で、敏感肌の方でも心地よく過ごせます。


耐久性が高い
綿は他の天然繊維と比較しても水に強く耐久性が高いです。

強度があるので毎日の洗濯でも生地が傷みにくく、洗濯の頻度が高くなりがちな夏の衣類にぴったりです。

また、耐熱性も高く熱に近づけても溶けたり、柔らかくなりにくい性質も持ち合わせています。

その効果はミトンや布巾など調理用具にも使われるほどです。

なので、シワが気になる時などはアイロンをかけて対処する方法が使えます。


染色性・発色性がいい
綿は染色時、気温や圧力に左右されにくく、染まりやすいため、様々な色柄を楽しむことができます。

先染め(繊維・糸の状態で染める)や後染め(布の状態で染める)だけでなく、難易度の高い製品染め(製品化してから染める)もでき染め方のバリエーションも豊富です。

また、様々な種類の染料を使え、思い通りの色を乗せることができるのも特徴です。

デメリット

縮みやすい、シワになりやすい
水やアルカリに強い反面縮みやすくシワができやすいです。

洗濯の時に吸った水分が乾燥する際に繊維も一緒に縮んでしまう場合があります。

これは水分で膨張した糸が乾燥して元に戻ろうとはたらくためです。

防ぐためにも脱水後はなるべく早く洗濯機から取り出してください。

干す際も、縮んでしまった繊維を元の状態になるように引っ張ってよく伸ばすように干すことで、縮みやシワを最小限に抑えられます。


色落ちしやすい
天然繊維は生地の風合いを大切にして作られているため、化学繊維に比べて染色堅牢度が低く、色落ちしやすいです。

特に色の濃い物は染料を多く使用しているため、洗濯中に他の衣類に色移りしてしまう可能性あがあります。

洗濯の際は色物と分けて洗濯したり、衣類同士の接触をなくすためにも洗濯ネットの使用をお勧めします。

染色堅牢度とは…


着色された繊維製品の染色の丈夫さを表す度合いの事です。

具体的にはクリーニングや日光、摩擦、汗など様々な作用による色落ちの耐性・抵抗性を表しています。

日本国内ではJIS、海外ではISOで基準が定められています。

乾きにくい
優れた吸水性はメリットも多い反面、吸った水分を蒸発するのに時間がかかり、乾きにくいというデメリットがあります。

運動や夏の汗をよく吸収してくれますが、なかなか乾いてくれずべたつきを感じることも…。

湿った状態が続くので、汗冷えが発生したり、敏感肌の方は肌荒れを起こすこともあります。

洗濯物であれば、乾くのに時間がかかり、雑菌やニオイの原因になることも。

麻(リネン)

衣料用に用いられる麻は2種類あり、それぞれ亜麻リネン)と苧麻ラミー)と呼ばれます。

ホテルや病院のシーツや枕カバーをリネンということがありますが、ここで取り上げるリネンとは別物です。

洗濯表示を見て「リネン100%」とあれば、亜麻が使われていることがわかりますが、「麻100%」と書いてあるときは、どの種類の麻が使われているかを特定することができません。

麻は植物の茎にある靭皮から採れるため、靭皮繊維に分類されます。

吸湿性に優れ耐久性があるので、繊維が伸びにくく硬いのも特徴です。

肌に触れたとき冷感を与えることから春夏衣料に使われることが多いです。

麻の吸湿性は綿と比べるとわかりやすく、綿は水分を吸うと溜める特性があるが、麻は吸った水分を外に逃がす特性を持っています。

また、リネンは繊維が細くて短く、やわらかいためソフトなシャリ感と深い光沢があるのに対し、ラミーは繊維が太くて長く、かたいためにシャリ感と強い光沢があります。

シャリ感とは…

麻や綿などで織られた生地でよく聞く「シャリ感」とは、生地の感触を表現する言葉です。

シャリシャリとした手触りのハリやコシがある生地や夏用生地の清涼感を表す時に使われることが多いです。

メリット

速乾性が高い
吸湿性・吸水性に優れており、綿やポリエステルなどほかの生地に比べて速乾性がずば抜けて高い。

汗を吸うだけでなく外に逃がす能力が高いので、夏場は長時間来ていても体に張り付くことなく着心地がいいです。

見た目も手触りもカラッと乾燥しているような風合いがあり夏場の服にぴったりな素材です。


伸びにくく型崩れしにくい
麻生地は硬いという特徴があるので伸びにくくもなっています。

「生地が伸びない=繊維が伸びない」ので型崩れもしにくいです。

ハンガーに干しても、洗濯ばさみで挟んで吊るしても大丈夫なので、干し方を気にしなくていいのは楽チンですね。

耐久性もあり同じ厚さの綿に比べて約2倍にもなり、濡れると一層強度が増す性質も持ち合わせています。


抗菌作用があり衛生的
リネンにはペクチンという糊のような成分が含まれており、表面をコーティングしてくれています。

この作用によって汚れが奥に入りにくく、洗濯で洗いが落ちやすくなっています。

早く乾く上にペクチンの効果があることで、雑菌が繁殖しにくいので清潔です。

寝具やテーブルクロスにも麻が使われるのはこの衛生面の強さがあったからなのです!

デメリット

変色しやすい
麻はナチュラルな見た目の通り自然派の素材です。

しかし、紫外線に弱いという特徴があるため長時間日に当てることで、せっかくの風合いも変色・劣化することがあります。

洗濯物を干す時は日の傾きや時間を考慮して、できるだけ日に当たらない場所で干すことを心掛けましょう。

もちろん、麻は日陰でもすぐ乾くので日が当たらない屋内で干すのもおすすめですよ。


シワができやすい
麻生地はシワになりやすく、シワが取れにくい性質があります。

特に新品のパリっとしたものほど、長時間折れ曲がっているとその部分にシワができてしまいます。

洗濯機の脱水によって絞りジワができてしまうので、脱水無くすか、時間を短く設定しましょう。

干す際も、シワを作らないためにしっかりと叩いて生地を伸ばしましょう。

それでも気になるシワができたときはアイロンをかけてください。

新たな植物繊維

従来ではあまり使用されていなかった植物も、近年技術の進歩によって新しい繊維として衣料品などに使用されるようになってきました。

下のリストは新しく使用されている植物繊維の一部になります。

新たに活用されている植物繊維

・竹

・バナナ

・サトウキビ

・ココナッツ

・ケナフなど

植物は二酸化炭素を吸収して生育するので、成長力の旺盛な熱帯・亜熱帯の草木を計画的に栽培→利用する循環システムを築くことができれば大気中の二酸化炭素濃度の抑制と化石燃料枯渇化の抑制に寄与できると期待されています。

これら植物繊維の多くは中空構造(繊維の中が空洞の物)や多孔性(細かい穴がたくさん開いている)であるため、吸水性、軽量性、遮熱性に優れているものが多いです。

一方で繊維が太く短いため単独での使用は難しく、現在は主に綿と混ぜ合わせて使用されています。

まとめ

今回は植物繊維についてお話ししました。

天然の素材であるため肌に優しく、小さいお子さんから敏感肌の人まで気兼ねなく使えるのはいいですよね。

新しい植物繊維も興味深く、調べてみると他にもいろいろな植物から作られているみたいなので、気になった方は是非調べてみてください!

実際にバナナの茎から採られた繊維や竹の繊維から作られた服は販売もしているみたいです。

次回は天然繊維のもう1種類である動物繊維についてご紹介しますので、ご期待ください!

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