着物

着物の事をあなたは知ってる?~和服の種類と着用シーン~

皆さん、あけましておめでとうございます。本年も宅配クリーニング十兵衛をよろしくお願いいたします。

新年最初の記事は年末年始に着ることも多い、着物についてお話していきます。着物には種類に応じて着用シーンが決まっています。また、同じ着物でも生地や色柄によって着用シーンが変わってきます。知らないで着ていて恥ずかしい思いをするのは避けたいですよね。
なので今回は、和服の種類とそれぞれの着用シーンについてご説明いたします。是非ともご覧ください!

着物の「格」

そもそも着物には「」があるのを知っていますか?格は着物を着る際の約束事であり、同席する相手への配慮でもあります。ここでは大きく4つに分けてお話ししていきます。

礼装…第一礼装や正礼装とも呼ばれ最も格が高い着物です。着物の中でも儀式や式典などのフォーマルな場面で着用するのに適した、正式な服装の事を言います。

準礼装…礼装の次に格が高い礼装です。格式張らない結婚式やパーティーに向く装いとなっています。紋の数や色柄、帯などによって準礼装にも略礼装にもなるので注意が必要です。

盛装…礼装・準礼装が冠婚葬祭や公の行事で着用されるのに対し、パーティーなど華やかに装うことを目的とした装いが盛装です。

普段着…気軽なお出掛け着となる着物を指します。街着なのでフォーマルな場面では着用できません。

女性用着物

まずは、女性の代表的な着物からお話ししていこうと思います。着物と一口に言っても詳しく見ていくときりがありません。そこで今回は以下の12種類に絞って見ていきましょう。

打掛うちかけ

結婚式に花嫁が着る着物のことです。小袖の上に打ち掛けるように羽織ることからこのように呼ばれています。刺繍や絞りのほか、摺箔すりはく縫箔ぬいはくなどをあしらって、衣装全体に絵画を描くように模様をあしらいます。

打掛というと色打掛を思い浮かべる方も多いと思いますが、他にも白打掛など種類があります。和服の花嫁衣装でお馴染みの白無垢も白打掛の一種です。

白無垢…結婚式でのみ着用できる最高格の着物で、掛下から小物まで白一色で仕立てられています。頭には綿帽子を合わせるのが一般的です。
昔、白色は「太陽の色」とされ神聖な色で、花嫁の清らかさや心の美しさを象徴していました。「嫁ぎ先のどんな家風にも染まります」という意味を持つとも言われています。

色打掛…色も柄も華やかな色打掛は、結婚式だけでなく披露宴でも着用可能です。頭には角隠しを合わせ、綿帽子はタブーとされています。
角隠しを付けて色打掛で挙式に臨むこともできますが、挙式時は白無垢を着て会食や披露宴で色打掛のほうがお色直しをより印象的にすることができます。

黒紋付くろもんつき

喪服として着られることも多い黒紋付ですが、帯や小物によっては慶事の際にも着用できます。喪服として着る際は帯も黒一色の「黒喪帯」を合わせます。

未婚・既婚問わず着用でき、その名の通り生地は黒一色で柄がついていないのが特徴です。背中・両後ろ袖・両胸(5か所)に紋が入っています。

背につける紋を「背紋」…ご先祖様を表しています。
※昔、邪気や災いは背中から入ってくると考えられており、背中に紋を付けることでご先祖様が守ってくれると考えられていました。
両袖外側の紋を「袖紋」…兄弟・親戚を表しています。
両胸につける紋を「抱紋」…両親を表しています。

このように5つの紋にはそれぞれ名前と表しているものがあります。5つの紋が付いた和服は、血筋や一族を表し家族の愛に満ち溢れたお守りの着物としても考えられています。

振袖ふりそで

未婚女性の第一礼装で、何と言っても長い袖丈が一番の特徴です。
※未婚女性であれば年齢にかかわらず着ることができます

袖の長さによって、大振袖・中振袖・小振袖に分類され着用シーンが異なります。帯は袋帯を合わせるのが基本とされていますね。華やかで若々しい柄のものが多く、「晴れの舞台」と言われるシーンで着用されます。

大振袖…袖丈は114㎝前後です。引き振袖やお引きとも呼ばれます。振袖の中では最も格が高く、主に結婚式や披露宴で着用されます。引きずるほどに長い袖丈は気品の中にも艶っぽさがあり、凛とした美しさを演出します。大振袖の中には5つの家紋が入ったものもあります。


中振袖…袖丈は100㎝前後です。大振袖に次ぐ礼装で、成人式でよく着用されるのはこの中振袖です。結婚式で花嫁が大振袖を着る際、ゲストは衣裳が似てしまわないように中振袖を選ぶのが礼儀とされています。


小振袖…袖丈は85㎝前後です。小振袖は二尺袖とも呼ばれ、袴やブーツなどと合わせたときのバランスがちょうどいいです。このことから卒業式でよく着られています。振袖の中ではカジュアルなので観劇やちょっとしたパーティにも気軽に着ていくことができます。

黒留袖くろとめそで

既婚女性が着る最高格の着物で、和服の第一礼装です。生地の色は黒で5つ紋が入っているのが特徴となっています。裾には絵羽模様が施されており、帯は錦織や唐織の袋帯、丸帯を合わせるのが基本とされています。

最近では新郎新婦の身内に未婚の方が増えたことや色留袖の方がバリエーションが広いこともあり、黒留袖を着用するのは、新郎新婦の母親のみのスタイルが増えています。

絵羽模様えばもよう
着物に描かれる模様の一つで、着物を広げたときに「一枚の絵」に見えるのが特徴です。縫い目をまたいでも模様が途切れず、制作難度が高い柄付けです。そのため着物の格も高く、留袖や振袖、訪問着などに見られます。
模様は花や鳥、自然風景など縁起のいいものが多いです。

色留袖いろとめそで

色留袖は生地が黒以外の留袖です。格の高い着物で親族などの結婚式に着用されることが多いです。紋の数により格や着用シーンが変わります。上半身は無地で裾のみに絵柄が広がっているのも特徴ですね。紋が減るほど格は下がりますが、カジュアルシーンでは着られません。

最近では未婚・既婚問わず着用できるうえ、華やかな色からシックな色など様々なデザインがあるので人気を集めています。

訪問着ほうもんぎ

訪問着は振袖や留袖の次に格が高い着物です。柄が襟や袖をまたがって続いているのが特徴ですね。格の高い着物なので帯も格の高い袋帯を合わせるのが一般的となっています。着用シーンは幅広く、結婚式や卒業式といったフォーマルな場面から、お食事会や観劇のようなカジュアルシーンまで着用できます。

また、未婚・既婚問わず着用できる便利な着物となっています。訪問着は着物の中でも色柄のバラエティに優れており、古典的な柄行の物もあれば、パーティ用の個性的な柄の物もあります。
※フォーマルな場から同窓会など幅広いシーンで着る予定がある場合は、古典的な柄行の物を選ぶといいですよ。

付け下げ

左肩にワンポイントの柄が入った着物で、訪問着の次に格が高いです。袋帯を締めれば格を上げることができ(子供の卒業式や七五三などに向き)、名古屋帯や洒落袋帯を締めれば格を落とせる(お食事会や観劇などに向き)のも特徴です。

訪問着と混同しやすいですが、付け下げの柄は訪問着とは異なりワンポイントで独立しています。シンプルかつ活用の幅が広く、訪問着と色無地の良いとこ取りができるので着物初心者にお勧めですよ。

色無地いろむじ

白生地を黒以外の一色のみで染め、柄がついていない着物です。格は生地自体に織り込まれている柄の「地紋」がついているかどうかで変化します。

紋の数が多いほど格は高くなりますが、着用シーンが限定されてしまいます。紋を1つ入れるだけで紋を入れていない(無紋)訪問着より格上の略礼装になりますが、紋を入れなければオシャレ感覚で普段着としても着ることができるので、一つ紋か無紋がおススメです。

地紋
糸や織り方を変えて布地全体に織り出した織模様の事です。地紋は生地に後から模様を描いたり、刺繍したりするのではありません。色無地で一色染めであっても生地に柄が見えるのが特徴です。地紋が入っていれば白一色の生地でも角度と光の反射の仕方によって柄が見えます。

小紋こもん

生地全体に小さな模様が入っている付け下げや色無地よりも格が低い着物です。同じ模様が同じ方向に繰り返し入っており、カジュアルに着られるデザインからドレスアップされたデザインまで幅広いラインナップで展開されています。洋服でいうとワンピース的な位置づけです。

小紋には有名なものがあり、代表的なのは以下の3種類です。

江戸小紋…一見すると無地に見えるほど細かい柄が特徴。鮫・行儀・角通しなどが有名です。緻密な作業が必要とされ、非常に高度な技術が求められます。最近では「東京おしゃれ小紋」という新しいジャンルもできました。


加賀小紋…京小紋の影響を受けて石川県で作られたと言われています。手描き友禅と型友禅という2つの手法がありますが、どちらにも加賀友禅の技法が取り入れられています。刺繍や金箔加工を使わないので江戸小紋に比べると優しく気品の良さを感じるのが特徴です。


京小紋…その名の通り京都で広まった小紋です。型染めと京友禅の技術を合わせたもので明治時代に流行したとされています。模様が比較的多いのが主流で華やかで鮮やかな印象ですね。

3種類とも大きく雰囲気が異なるので、同じ小紋でも様々な着こなしを楽しむことができますよ!

つむぎ

糸の段階で様々な色に染められその糸を組み合わせて織り上げていく着物です。昔は紬を日常着として使っていたので、その土地の風土に合わせた織物があります。

代表的なものだと大島紬、結城紬、紅花紬などがあります。小紋同様、普段着やおしゃれ着として着られ、友人とのお食事会やお稽古にぴったりです。あくまで普段着なので式事に着ていくのはNGです。

御召おめし

男性の場合、無地の御召に紋を入れフォーマルな場面で着るイメージがありますが、女性の場合、無地に限らず縞、格子、とび柄など様々なデザインがあります。ですので、女性用の御召は柄ゆきによってフォーマルからカジュアルまで着ることができます。

「高貴な方がお召しになる」ことから御召という名前が付きました。江戸時代までは着心地の良さとシャリ間のある上質な生地風合いから武家や貴族が愛用していたとされています。

浴衣ゆかた

浴衣は最も格が低い着物です。薄手の生地が多く、通気性や速乾性に優れています。長襦袢は着ずに素肌に直接着るのが特徴で、他の着物と異なりおはしょりを作る必要もありません。草履ではなく下駄と合わせるのも浴衣ならではですね。着用シーンは夏祭りや花火大会などが多いです。

かつては湯上りや寝間着としても着られていました。浴衣以外の着付けの練習台として活用するのにも向いていますよ。

※着物の着用シーンについては、地域や流派によってルールやマナーが設けられている場合があります。心配であれば友人や親族に相談したうえで着物を選ぶようにしましょう。

季節別の着物の種類

着物には季節によっても着る種類が変わります。暑い季節や寒い季節を快適に過ごせるようそれぞれの特徴を見ていきましょう。

あわせ

袷とは裏地が付いた着物のことで、10月上旬から5月下旬の比較的寒い季節に着用します。生地が二枚縫い合わさっているので浴衣のように透け感がありません。冬でも暖かく過ごせ、着る時期が一番長いので街でよく目にするのは袷の可能性が高いですね。夏は熱気がこもり暑いため、あまり着用されません。

単衣ひとえ

単衣は袷と違い裏地がついていない着物です。6月初旬から6月末や、9月初旬から9月末の季節の変わり目に着られることが多いです。通常、7・8月は薄物を着ますが、暑さによっては単衣を着ても問題ありません。
※例外として、ウール生地の単衣は秋・冬・春の3シーズンで着用可能ですよ。

生地が薄いと透けや破れが心配ですよね、そんな時はお尻の部分に居敷当ていしきあてという布を付ける場合もあります。

薄物うすもの

単衣と同じく裏地が無い着物で、生地が薄く透け感のあるものを薄物と言います。7月初旬から8月末の暑い時期に着用されます。暑い時期でも快適に過ごせるよう通気性が良く涼しい素材でできているのが特徴です。生地によってフォーマルシーンからカジュアルシーンまで着られるのもいいですね。薄物の生地は以下の3つが代表的です。

…薄物の生地の中でも特に代表的な素材と言えます。規則的に目が空いており、透け感があって通気性がよいのが特徴です。もじり織という特徴的な織り方によって生地に隙間ができ透け感もあるので通気性が良くなっています。夏時期の結婚式などフォーマルな場面に向いています。


しゃ…等間隔で目が空いている生地で絽よりも更に透け感・通気性が優れています。さらりとした着心地で見た目にも涼しげです。カジュアルからセミフォーマルまで様々な場面に着ていけますよ。

あさ…植物の麻から作られた生地です。麻は吸湿性や通気性が高いので、汗をかいても肌触りがさらっとしている素材です。自宅でも洗濯ができるので夏の普段着にも最適です。フォーマルなシーンにはNGなので、ちょっとしたお出かけの際に着用しましょう。

男性用着物

男性にも着物の種類や格はありますが女性より種類が少ないです。また女性のように未婚・既婚で変わることもないので、「礼装」と「それ以外」という大まかな分け方でよいでしょう。

黒羽二重くろはぶたえ五つ紋付

正装の条件である「紋付羽織袴」の中でも最も格式が高い着物です。年齢に関係なく羽織・袴が基本で、礼装のため女性と同じく背中・両袖後ろ・両胸の五か所に紋がついています。結婚式の花婿や仲人などの服装として着用されます。

本来、黒羽二重のような黒紋付を着る際は白羽二重の下着を着用しますが、現在では白の比翼仕立てで、裏地や襦袢の半衿、羽織紐、足袋などを白で揃えるようにしても問題ありません。

色紋付いろもんつき

地色が黒以外の色で紋章を染め抜いた和装です。五つ紋、三つ紋、一つ紋などがあり第一礼装の下にあたる、準礼装や略礼装として着用されます。花婿の装いには染め抜きの五つ紋を付けて着用します。黒紋付に比べると格は下がりますが、グレーや茶、紺などの無地に染め上げた「色紋付」もフォーマルなシーンに着ていけます。

※花嫁が白無垢・色打掛・黒引き振袖・大振袖などの正礼装だった場合、色紋付は比べると格下になってしまうのでNGです。その際は黒羽二重五つ紋付を着用するようにしましょう。

お召一つ紋付

通常、着物は先に染めてから生地を織る「織物」の方が、織ってから染める「染物」より格下になるのですが、例外的に男性の場合「お召」と呼ばれる織物は各上扱いになり、準礼装として使用することができます。

お召は縮緬ちりめんに手法を加えて作られる絹織物で、ハリがあるのが特徴です。その為、着崩れやずれやシワになりにくく、裾さばきがよく動きやすいですよ。

お召一つ紋は着物の背中に紋が一つ入っている。紋が入っていることにより格が上がり、女性でいう色無地紋付や訪問着と同格になります。結婚式に呼ばれた時や改まった外出の際に着用します。

上布じょうふ

浴衣と並び夏の代表的な着物で、吸汗性も良く、見た目も肌触りも良いのが特徴です。薄地の良質な麻織物の着尺地きじゃくじの事で、最近では絹・綿・化合繊の織物も上布といいます。

上納のための「上質な布」、「上等の布」から上布という名が付きました。新潟の「雪さらし」で有名な「越後上布」は重要無形文化財にも指定されています。

着物の格はあくまで普段着なので公式の場では着れません。また、薄物で透けて見えるので体形に合った仕立てが必要で、着方にも多少工夫が必要になってきます。

※この他にも男性の着物には女性同様、紬や浴衣があります。

まとめ

さて今回は着物の種類についてお話ししました。知らない名前の着物があった方も多いのではないでしょうか。振袖のように同じ着物でも些細な違いで着用シーンが変わってきます。決まりごとが多く難しいように感じられますが、浴衣など簡単なものからチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

次回は着物のお手入れやクリーニングについてお話ししていこうと思います。お楽しみに!

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