鞄から財布、小物入れと様々な種類がある「がま口」。
和の小物として知られ昔から人気ですが、その歴史を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか?
また、使っていて汚れてしまったがま口…。
「金属部品があるからお手入れの仕方がわからない」そんな方必見!
お手入れ方法についても紹介しているので、ぜひご覧ください。
がま口の歴史
がま口は明治政府御用商人である山城屋和助が明治5年、フランスから持ち帰ったのが最初といわれています。
日本の小物というイメージが強いですが、海外発祥の物なんですね。
この山城屋和助は陸海軍用の兵器輸入のため、明治4年からヨーロッパとアメリカを巡っていました。
その際フランスで大流行していたがま口の財布や鞄を見かけ日本へ持ち帰ったのです。
それから山城屋和助はフランスのがま口を模して売り出し、次第に日本全土に広がっていくこととなります。
当時、日本では貨幣のみが流通しており、財布には「懐中信玄袋」という小型の信玄袋が使われていました。
しかし山城屋和助が、がま口を持ち帰るちょうど前年、明治4年に紙幣が発行されました。
そこでがま口の財布に紙幣を入れられるよう改良して販売したところ、少しずつ売上を伸ばしていきます。
しかし、がま口財布が売られるようになった当初がま口を使用するのは一部の富裕層のみでした。
というのも、口金には真鍮が使われ、職人が細工を施して作っていたため今とは比べ物にならないほど高価だったのです。
後に、安価な溝輪金の口金が開発されるとがま口財布は庶民にも普及し、大流行となりました。
また、山城屋和助ががま口財布と並んで生産したがま口の鞄は、本格的な鞄づくりの先駆けとも言われています。
それまで日本には「胴乱」という方や腰の下げて持ち歩く袋物があったのみで、西洋式の鞄はまだ広まっていませんでした。
そのようにして明治10年ごろには、がま口は全国に知れ渡り普及していきます。
明治25年ごろには生産技術や材料が改善され、高品質な製品が安定して作られるようになりました。
そして大正時代には洋服が広まったことにより、洋装に合う婦人用のがま口鞄が流行しました。
昭和に入り戦後になると、ナイロンやビニール素材の生産が進み、がま口財布や鞄にも使われるようになります。
そうして現代に合う化繊の機能的ながま口誕生に至るのです。
名前の由来
名前の由来は大きく口を開いた姿が「ガマガエル」に似ているため。
かえるは日本をはじめ、ヨーロッパやインドでも豊穣や恋愛成就、幸運の象徴として愛されているモチーフです。
「福かえる」、「金かえる」という言葉のゴロの良さからがま口も縁起物として親しまれています。
また、がま口を開閉するための丸い玉にも名前があるのを知っていますか?
実はあの部分にも名前があるのです。
その名も「らっきょう玉」。
よくカレーなどに沿えられる、あのらっきょうです。
由来はらっきょうに似ている形だからという、とってもシンプルなもの。
細長い茎に根元がぷっくりと膨らんでいる姿は、確かにらっきょうに似ていますよね。
金具は丸だけでなくいろいろな形があり、こけしの頭の形に似たこけし玉や、米俵に似たタワラ玉などもあります。
お手入れ方法
がま口は他の鞄や財布とは違い大きな金具を使用しているので、使うにつれて緩くなったり、また固くて開けづらいなどの問題がたまに出てくるものでもあります。
がま口財布に一番負荷がかかる場所はもちろん「口金」部分。
そのため、口金部分の不調はどうしても避けられない問題です。
「本来らっきょう玉は閉じた状態なのに隙間が…」、「ゆるくてがま口の閉まりが悪い」といった症状が出たらメンテナンスのタイミングですよ。
口金の仕組み
口金は全体を囲む「フレーム」の左右を「蝶番」でつなぎ合わせたもので、中央の「玉」がうまく交差することで開閉が出来る仕組みになっています。
ですので長く使っていると金具の緩みなどが出てくる場合があります。
蝶番部分をよく見てみると左右で互い違いになっているのが分かるでしょうか。
この部分を前後に調整することで締めたり、緩くしたりすることが出来ます。
口金が緩い時・固い時
金具が緩い時は上記のように、それぞれ外側に蝶番が出ているフレームを内側に押し込むように力を入れてください。
両手で包み込むように蝶番部分を押さえて少しずつ力を入れてあげるとうまく調節が出来ます。
金具が固くで使いづらい時は、逆方向に押し広げるようにすると緩まりますよ。
締める時も緩める時も、ポイントは「少しずつ」締まり具合を確認しながら行ってください。
無理に力を入れたり、一気にやろうとすると金具が破損することもありますので、注意して下さい。
この方法で大体の調整はOkです!
それでも隙間がある時はつまみを微調整してあげましょう。
その際はペンチと当て布を用意してください。
つまみの部分をペンチで少し締めるように押し倒していきます。
この時、必ず当て布などで傷がつかないようにして行ってくださいね。
古いものだとつまみの金具が劣化して折れやすくなっている場合もあるので、この方法を行う場合は慎重に、少しずつ少しずつ調整して下さい。
※財布の状態にもよるので自己責任でお願いします!
片側が終わったらもう一方も少しずつ調整して、左右の玉がうまく噛み合うようにしていきます。
お手入れ方法
前提として、ガマ口製品は金具部分の縫製方法などが少し特殊なので水洗い、丸洗いはしてはいけません。
ガマ口製品の生地部分をお手入れする時は、金具部分や隙間部分を濡らさないようにしながら行うようにしましょう。
きっちりと金具部分が保護できていれば、他の財布・鞄同様のお手入れ、メンテナンスで大丈夫です。
全体を綺麗にしたいときは1ヶ所ずつ綺麗にしていきましょう。
がま口製品の生地部分のお手入れ手順
1.中性洗剤を水で薄めて布に取り硬く絞ります。
2.金具を濡らさないように全体を洗浄。
内側の汚れが気になる部分は「トントン」と押し当てながら少しずつ汚れを取っていきます。
3.洗剤が残らないように同じように水のみで硬く絞った布で水拭きしていきます。
4.乾いた布で乾拭きをします。
5.革財布の場合は洗浄が終わったら専用のクリームで保湿を行うようにしましょう。
まとめ
今回は、がま口についてご紹介してきました。
和物イメージが強い、がま口が海外から来た物だったなんて驚きですね。
鞄から小物入れまで様々な種類があり、最近では100円ショップでもがま口製品を作るためのキットがあったりします。
何かと便利でおしゃれながま口、この機会にぜひ一つ持ってみてはいかがでしょうか。