洗剤

石鹸と合成洗剤の違いって何?~相違点とメリット・デメリットを一気に解説~

皆さんは普段の洗濯で石鹸を使っていますか?

それとも合成洗剤を使っていますか?

どちらも汚れを落とすし、何が違うのかわからない人も多いかと思います。

そこで今回は、石鹸と合成洗剤の違いになどに触れていきます。

石鹸と合成洗剤の違い

原料製法成分の相違点で石鹸か合成洗剤かに分けることができます。

下の図は石鹸と合成洗剤の違いを簡単に説明したものになります。

※石けんの方にドラム式洗濯機には使用不可とありますが使い方次第では洗濯できることもあります。

その際は、洗濯機の説明書などをしっかり確認してから使用するようにしてください。

原料

パーム油

石鹸
化学合成されていない天然油脂・脂肪酸(牛脂・パーム油・米ぬか油など)が原料です。

油脂成分に含まれる界面活性剤の1種である「直鎖脂肪酸ナトリウム塩」が汚れを落とす役割を果たしています。


洗剤
石油や天然油脂が原料で、そこに様々な助剤を合成することで作られています。

用途によって配合を変えることで、酸性・弱酸性・中性・弱アルカリ性・アルカリ性と変化させることができます。

製法

石鹸
天然油脂(もしくは天然油脂が元の脂肪酸)を原料に、「ケン化法」もしくは「中和法」という製法で作られています。

「ケン化法」は天然油脂などの原料に、炭酸塩をはじめとしたアルカリ成分を加えて化学反応鹸化)させることで作られるのが石鹸になります。


合成洗剤

そもそも洗剤を作るにはその独特な製造工程のため、工場などの大規模な製造施設が必要です。

まず石油からアルキルベンゼン・アルファオレフィン・高級アルコール(炭素数の多いアルコール)といった合成界面活性剤原料を作ります。

それを「硫酸化スルホン化)」→「中和」→「付加重合」といった複雑な化学合成を経て合成洗剤を製造しています。

また、合成洗剤には界面活性剤だけではなくビルダー(助剤)や添加剤が配合されています。

ビルダー助剤)とは…
自身は界面活性作用を持たず、洗剤に配合されることで洗浄力を著しく増強する物質です。

ビルダーの作用には、アルカリ緩衝、硬度成分除去(水軟化)、重金属イオンの封鎖(キレート)、ミセル増強などがあります。

1種類のビルダーで複数の作用を併せ持っている種類もあります。

一般的な合成洗剤には2~3種類の物質が配合されています。


添加剤とは…
添加剤はビルダーのように洗浄力を増強するのではなく、洗剤の性能を向上させたり、製品の付加価値を高めるために少量配合される物質です。

蛍光剤や酵素、再汚染防止剤、漂白剤、香料などが添加剤にあたります。

石けんにも助剤や添加剤が配合されている場合がありますが、その種類は限られています。

しかし合成洗剤は、配合されるビルダー・添加剤の種類がとても多く、中には安全性や環境への影響に疑問のあるものも少なくありません。


最近では「植物由来」といった天然油脂を原料にした合成洗剤も存在しますが、石油由来の合成洗剤同様に複雑な化学合成を繰り返し、最終的には自然界には存在しない合成界面活性剤を成分としています。

成分

石鹸
石けん素地」や「カリ石ケン素地」、「純石けん分脂肪酸ナトリウム脂肪酸カリウム)」という成分で出来ています。

純石けん分以外の界面活性剤は含有されていません。

「界面活性剤は石鹸にも使われているの?」と思った方もいると思います。

実は石鹸にも界面活性剤は含まれています。

ややこしいですが、「石鹸」の中には「石けん(直鎖脂肪酸ナトリウム塩)」という名称の界面活性剤があるのです。

「石鹸」は、この直鎖脂肪酸ナトリウム塩という名称の界面活性剤を主成分にしているため、他の界面活性剤を含んでいないのです。

この成分としての石けんは「純石けん分」と表記されることが多いです。


合成洗剤
合成洗剤は化学合成から作られた合成界面活性剤が主成分となります。

この合成界面活性剤が30%以上の割合を占めていれば合成洗剤になります。

製法でも軽くお話ししましたが、合成洗剤は主剤となる界面活性剤の他に様々な助剤・添加剤を組み合わせて作られています。

また、石鹸と合成洗剤のハイブリットとして「複合石けん」という物もあります。

これは純石けん分以外の界面活性剤を30%未満含有するもののことを指しています。


下の図はそれぞれ石鹸と合成洗剤の成分表示を模したものです。

まず製品名ですが、それぞれ「石けん」、「合成洗剤」と表記されています。

また成分表示も石鹸であれば「純石けん分」や「脂肪酸ナトリウム」と表記されます。

それに対して「界面活性剤」と書かれていたり、「石けん」という文字がなければ、合成洗剤とみてほぼ間違いないでしょう。

つまり、商品の成分表示を見れば「石鹸」か「合成洗剤」かを簡単に見分けることができるのです。

界面活性剤とは

「界面」とは物と物の「境”界面”」という意味です。

「界面活性剤」は油と水などの本来混ざりあわない物質の間にできる境界面(=界面)の性質を変え、混じり合わせることができるようにする物質の事を言います。

洗濯ではこの仕組みを利用することで油分を含んだ汚れを落としています。

石鹸は界面活性剤の1種で動植物の油脂をアルカリで煮て作られます。

一方、石鹸以外の界面活性剤は合成界面活性剤と呼ばれ、石油や天然油脂を原料に化学合成を繰り返して生成されます。

つまり石鹸以外はすべて合成界面活性剤に分類されるのです。

この合成界面活性剤は約2000種類あり、中にはPRTR制度で「人の健康や生態系に有害な恐れがある化学物質」に指定されているものもあります。

PRTR制度

まず、人の健康や生態系に有害な恐れがある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量及び廃棄物に含まれて事業所外へ移動する量を、事業所自らが把握し国に届出を出します。

その後、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度です。

平成13年4月から実施されており、化学物質による環境保全上の支障を未然に防止するのが目的となっています。

石鹸の歴史

石鹸の起源はなんと紀元前3000年頃で、今からおよそ4000~5000年前の出来事です。

古代ローマ時代の初め頃、サポー(Sapo)という丘の神殿で羊を焼いて神に備える風習がありました。

羊をあぶる際、肉から滴り落ちる油と木の灰が反応し石鹸のようなものができました。

これが石鹸の起源とされ、石鹸が染み込んだ土は汚れを落とす効果があるとして重宝されました。

英語で石鹸を意味するソープ(soap)も、この丘の名前からとったとも言われています。


また、同じころにメソポタミア(今のイラク)でも石鹸が作られていました。

粘土板にくさび形文字で製法を記しており、塗り薬や織布の漂白洗浄に使われていたそうです。

合成洗剤の歴史

第一次世界大戦中、ドイツでは石鹸の原料である油脂が欠乏し、石鹸製造ができなくなりました。

そこで開発されたのが石油を原料とした合成洗剤です。

日本では1937年(昭和12年)にウール用中性洗剤として初めて市販されました。

その後、第二次世界大戦後にアメリカの石油資本の生産増大、電気洗濯機の普及、欧米の硬水地区における石鹸の欠点(石鹸カス)などで急速に合成洗剤が主流に変わっていきました。

アメリカでは1952年、日本では1963年に合成洗剤の使用量が石鹸の使用量を上回りました。

今では日本でも広く普及していますが、本格的に合成洗剤が使われるようになったのは約60年前なのです。

ただ、この60年の間にも水が泡立って下水処理が困難になったり、それを解決するためのソフト型洗剤の製造から普及と様々な出来事がありました。

石鹸のメリット・デメリット

石鹸と合成洗剤の違いを見てきたところで、次はメリット・デメリットについてご紹介します。

まずは石鹸のメリット・デメリットから見ていきましょう。

メリット

洗浄力が高いのにすすぎが楽チン
石鹸は洗浄力が低く、泡切れが悪いと思われがちですが、実際はその反対です。

石鹸はアルカリ性なので頑固な汚れにも強いのが特徴です。

しかも洗剤残りが少ないので、肌の弱い方や赤ちゃんの服にでも安心して使うことができます。


分解スピードの速さ
現在は下水道の普及率も上がり、自然環境に生活排水が直接放流されるようなケースは減りました。

それでも、自然に排出されることがあった時、合成洗剤は分解スピードが遅いので環境に負荷をかけてしまいます。

それに対し石鹸は自然由来のもので出来ているので、生分解性が高く環境へ負荷をかけることがありません。

デメリット

扱いが難しい
これは合成洗剤の逆です。

石鹸を使用するのが硬水だった場合は、ほぼ泡立ちません。

また、油汚れによる中和や水によって薄まることで途端に汚れ落ちが悪くなるので、合成洗剤に比べるとうまく使うのにはコツが必要になります。

石鹸での洗濯が難しいと思われがちなのはこのためです。


洗濯物が臭いやすい
生分解性が良いということは裏を返せば微生物が繁殖しやすいことに繋がります。

これは石鹸洗濯した衣類や洗濯槽が臭くなる原因にも繋がります。

嫌なニオイを防ぐために、洗濯物は脱水が終わったらすぐ干すようにしましょう。

洗濯槽も蓋を開けて乾燥させたり、定期的なお手入れできれいにすることが大事です。

合成洗剤のメリット・デメリット

次は合成洗剤のメリット・デメリットをご紹介します。

合成洗剤ならではの特徴が多くあるので要チェックですよ。

メリット

手軽に扱うことができる
石鹸は硬度分が高めの水だったり、油汚れに中和されたり、水である程度薄まったりすると、一気に洗浄力が落ちてしまいます。

洗浄力が落ちた目安としては泡立ちが悪くなります。

しかし、合成洗剤であれば洗浄力が変わらないと謳っているものも多くあり、実際洗浄力が落ちるということが少ないです。

そういう面では石鹸に比べ使いやすいというメリットがあります。


種類が豊富
ドラッグストアやホームセンターの洗剤売り場を見ると一目瞭然ですね。

石鹸がほんの数種類で小さなスペースしかないのに対し、合成洗剤は種類が豊富です。

色々な機能や香りがあるので、こだわりが強い人でも満足できるものを見つけることができるのではないでしょうか。


中性が作れる
機能に合わせて配合を変えることで様々な性質のものを作れると言いましたが、これは合成洗剤特有の性質です。

「中性」であればデリケートな素材でも洗うことができる上に、肌にも優しく嬉しいこと尽くめです。

石鹸では必ずアルカリ性になるため合成洗剤の大きなメリットと言えるでしょう。

デメリット

働きが強い
メリットの面で挙げた洗浄力の持続性ですが、あれがデメリットになってしまう事があるのです。

なぜかというと、しっかり洗い流さないとその場にとどまり働き続けるからです。

服であれば生地へダメージを与えることになりますし、もし肌に付着したままであろうものなら肌荒れを起こしてしまいます。

石鹸であればアルカリ側でしか働くことができないので、肌に残ったとしてもやがて「弱酸性」の皮脂に中和され働きをやめるので肌荒れのリスクが低いです。


分解スピードが遅い
昔に比べ人や環境にやさしい物が増えたとはいえ、石鹸に比べれば生分解性が低く分解までに時間がかかります。

分解スピードは合成洗剤に含まれる合成界面活性剤の種類で違いますが、中には100%完全に分解されない物もあります。

そんな洗剤を使って出た汚水を自然環境に流せば、環境に大きな負荷がかかります。

しかし、現在では汚水は下水処理施設でしっかり処理されます。

合成洗剤の含まれた生活排水は、ちゃんと排水口から流していれば何も問題はありません。

まとめ

今回は石鹸と合成洗剤の製法を中心にお話ししてきました。

製品名や成分内容を見るだけで石鹸か合成洗剤かを見極めることができるので、買う際には成分表示欄を見てみることで簡単に探しているものを見つけることができますね。

また、この石鹸と合成洗剤は一概にどちらがいいというわけではありません。

汚れの種類や水質、気温に合わせて使い分けるのがおすすめです。

それぞれの良い点をしっかり理解しながら、自分に合ったベストな洗濯洗剤を見つけられるといいですね!

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