この時期、サイレンを鳴らして出動する消防車を見たり、「火の用心」という言葉をよく聞くと思います。
火災は年中を通して起きるものなのに、どうして冬はこんなに注意が呼びかけられているのでしょうか?
それは…冬に火災が多発するからです!
今回は冬に火災が起きやすい理由やよくある出火原因について解説します。
冬に火事が起きやすいのは
火災は年中を通して起こりますが、どうして毎年冬に件数が急増するのでしょうか?
もちろんそれには理由があります。
そこでまずは、冬に火災が起きやすい理由を見ていきましょう。
空気が乾燥しているから
空気が乾燥すると、建物や家具などに含まれる水分量も少なくなり、引火しやすくなります。
特に風の強い日は、ちょっとした火の気でも大きな火事に繋がり、被害を広げる恐れがあるため注意が必要です。
暖房器具など火の使用が増えるから
気温の低い日が多い冬はストーブなどの暖房器具や給湯などでコンロを使用する場面が増えるかと思います。
火を扱うことが増えれば火災のリスクも高まるため、冬場の火の取り扱いは十分に注意しましょう。
建物火災の月別件数
建物火災は例年12月ごろから増え始め、1月にピークを迎えます。
そして2~4月までは火災の多い時期が続き、 2021年の場合、1~4月と12月の5か月間で、年間の発生件数の半分を占めています。
建物火災の出火原因
2021年に発生した建物火災で、一番多かった出火原因は「たばこ」です。
火災件数は3,042件で、全体の8.6%を占めます。
このうち1,921件が「不適当な場所への放置」とされ、いわゆる「たばこの不始末」が出火原因です。
3位は「コンロ」で2,678件、全体の7.6%にもなります。
このうち2,247件が「ガスコンロ」による火災ですが、火を直接使わない「IHクッキングヒーター」も火災につながるケースがあるため油断は禁物です。
最近は、電気機器や配線関連の火災も増えており、2021年のデータでは、「電気機器」が1,816件、「電灯電話等の配線」が1,473件、「配線器具」が1,354件、「電気装置」が626件となっています。
これらの火災は電化製品の誤った使い方や老朽化が出火原因とされています。
火が無い所でも火災が起きる?
火が無い所でも起こることがある火災を「収れん火災」と言います。
ペットボトルや透明な花瓶等、凹面状・レンズ状のものは、太陽光を反射または屈折させ、光が集中した場所にある可燃物を発火させる危険があります。
太陽の高度が低くなる冬場に多く発生する傾向があるため、火災の原因となる物は直射日光が当たらない場所に置くようにしましょう。
冬に多い火災を防ぐには
冬に火災が多い理由がわかれば、火災を防ぐ方法もいくつか見えてきますよね。
基本的なことが多いですがこれらを一つ一つ意識していけば火災を防げるので詳しく見ていきましょう。
たばこの不始末を無くす…
たばこには、煙だけが上がり続ける「無炎燃焼」という特徴があります。
そのため、火が見えにくく「消火した」と思っても、長時間かけて燻り続け、気づいたときには手遅れになるケースも少なくありません。
たばこに起因する火災を防ぐには、「決まった場所での喫煙」、「ポイ捨てをしない」、「消火したことを必ず確認」、「寝たばこはしない」といった基本的なルールを徹底することが大切です。
コンロから離れるときは火を消す…
コンロからの出火で多いのが「消し忘れ」です。
消防白書によれば、2021年に発生した2,678件のコンロ火災のうち、1,154件が「消し忘れ」であったと報告されています。
短時間であっても「コンロから離れるときは火を消す」ことを徹底しましょう。
また、コンロの近くに布巾やペーパーなど燃えやすい物があると、火が移ってしまう可能性があるため、「コンロの近くに燃えやすい物を置かない」ことも大事です。
電気機器・配線をこまめにチェックする…
電気系統の火災は、「トラッキング現象」や「たこ足配線」などが主な出火原因として考えられます。
トラッキング現象とはコンセントとプラグの間にホコリが挟まり、それが湿気を帯びてスパークし、やがて出火するという現象です。
「コンセント周りは定期的に清掃する」、「プラグは定期的に抜いてホコリを拭き取る」などの対策で、火災になるのを防ぎましょう。
また、たこ足配線は、一定の電気量を超えると発熱及び発火する可能性があります。
「一つのコンセントに集中しないよう分配する」など、たこ足配線にならないよう工夫することも大事です。
ストーブの近くに燃えやすい物を置かない…
ストーブによる火災は、近くにカーテンや洗濯物など燃えやすいものがある事が出火原因として多いようです。
また、就寝時にストーブを付けたまま寝てしまい、布団に燃え移るというケースもみられます。
「ストーブの近くに燃えやすい物を置かない」、「外出や就寝時にはストーブを消す」など、取り扱いには十分に注意しましょう。
家庭用消火器を用意しておく…
家庭で火災が発生したら身を守るための行動が最優先ですが、ボヤが発生したときに、初期の段階で消火できれば、大きな火災を防ぐことができます。
火災を初期段階で防ぐことは自分だけでなく、近隣住民の命を防ぐことにもなりますね。
この初期消火を行う上で有効なのが家庭用消火器です。
一般家庭には消火器を置く義務はありませんが、有事に備えて準備しておくといいでしょう。
また、家族みんながわかりやすく、すぐに使えるようにしておくことも大切です。
着衣着火に注意
料理中などコンロの火が服の袖口についたり、ストーブ近くで長時間座っている間に服に火が移ったり…。
こうした「着衣着火」と呼ばれる火災は冬に多く発生し、死傷者もたくさん出ています。
出火原因は「料理中」や「喫煙中」、「暖房器具のそばで」など日常的な動作の中の物が多いです。
着衣着火を防ぐためには
原因として目立つのはフリースなどの化学繊維の衣服に火が燃え移ったというもの。
特に注意が必要なのは”もふもふ”と”だるだる”の服です。
”もふもふ”とはフリース素材のように毛先が長く、毛羽立っている素材の事です。
毛羽立っている素材は表面積が広く、空気と触れ合う部分も広くなります。
そのため、毛羽立っている部分にちょっと火が触れてしまっただけでも簡単に燃え広がってしまうのです。
また、”だるだる”とは、裾や袖が広がっている服のことを指します。
裾や袖が広がっていることで、火から離れているつもりでも、服自体は火の近くに寄ってしまい、そして気付かないうちに着火して一気に燃え広がる…ということが起きているのです。
燃えにくい素材は?
服の素材でよく聞かれるのが「化学繊維は燃えやすい」、「綿100%なら大丈夫」といった声。
確かに衣類によって燃えやすさに差はありますが、基本的に衣類は一度火に近付けてしまえば一気に燃えてしまうものです。
素材を気にすることは大事ですが「綿100%だから大丈夫」という油断は禁物!
そんな時におすすめなのが「防炎素材」や「難燃素材」を使った服です。
調理中など火を使う時だけでも燃えにくい素材で作られたアームカバーやエプロンを着用するといいでしょう。
もし火災が起きたら…
気を付けていても火災が起きたり他の家の火が移ってきた場合はどうしたらいいのでしょうか?
では次に、火災が起きたときの初期行動について見ていきましょう。
大声を出してまわりに知らせる…
火災が起きたときはまず「火事だ―!」と大声を出しながら、家族や周りの人に知らせることが重要です。
もし大声を出せない状況の時はやかんやフライパンなどの金物をがんがんと叩くのも方法です。
その後、119番通報をし消火依頼をしましょう。
初期消火を試みる場合…
出火元が自分の家でまだ火がまだ大きくない場合、初期消火を試みるのいいでしょう。
火災は火が出ても天井に燃え移るまでは数分かかるので、その間に火を消せるかどうかが最大のポイントになります。
消火器が無い場合、近くにホースがある時は水を勢いよくかけ続け、近くにある物(ペットボトルの水、水槽の水、ふろの残り湯)をフル活用して初期消火を行いましょう。
ただし、てんぷら油の火災の場合は水をかけるのは厳禁!
更に燃え上がる可能性があるため消火器を使うか濡れ布巾をかぶせて空気を遮断し消火します。
着ている服に火がついた場合…
着ている服に火がついた場合は、焦って動き回らないようにしましょう。
まず、ぴたっとその場で止まり、その後床に横になってゴロゴロと転がります。
立ったままだったり、動き回ると却って火を一気に燃え上がらせてしまうので注意して下さい。
避難のポイント
1.天井に火が燃え移ったら、初期消火はあきらめ、全員すぐ避難する
2.避難する時は、ブレーカーを落とし、燃えている部屋のドアや窓を閉めて空気の流入を防ぐ
3.服装や持ち物にこだわらず、できるだけ早く避難する
4.お年寄りや子供、体の不自由な人は逃げるタイミングが遅れないよう、誰かが付き添い最優先で避難させる
5.煙をできるだけ吸い込まないよう、身をかがめて口元を布などで覆いながら避難する
まとめ
今回は冬に件数が跳ね上がる火災について見てきました。
環境の状態や衣類など冬特有のものが、火災件数を増やす要因に繋がっています。
火の始末や着ている服など基本的ではありますが、しっかりと注意して火災を防ぎましょう。
また、衣類着火はどの素材の服でも起こりえます。
着古して”もふもふ”と毛羽立っていたり、”だるだる”と襟や袖が緩んでいる服は、特に注意が必要です。
また、燃えにくい素材や綿100%の服を着ているからと言って燃えないというわけではありません。
火の近くにいるときは常に火災のリスクを考えて動くようにしましょう!