例年、8月を過ぎてもまだまだ暑い日が続きますが、皆さんはどうやって体をクールダウンしていますか?
暑いときに飲む冷たい飲み物は格別ですよね。
ただ冷たい飲み物は飲みすぎると体に悪影響を及ぼすことが…。
そこで今回は冷たい飲み物を摂取しすぎると体にどう悪影響なのか見ていきましょう。
温度があたえるからだへの影響

一般的に、食べ物・飲み物は体温との温度差が25℃以上あると、美味しいと感じることができ、温かいものは60〜70℃、冷たいものは5℃〜12℃と言われています。
逆に70℃以上や5℃以下は感覚が麻痺してしまうため、味を感じづらくなります。
このため、自動販売機では「冷たい」は約5℃、「温かい」は約50℃に設定されているようです。
基本五味と温度の関係
・塩味:温度が低いと強く、高いと弱く感じる
・甘味:30℃くらいから体温に近いほど強く感じ、低温・高温になるほど弱くなる
・酸味:温度によっての変化はあまりない
・苦味:低温~体温の温度では強く、高温では感じづらくなる
・うま味:体温付近で最も感じやすくなる
ぬるくなったジュースや溶けかけのアイスクリームが冷たいときに比べて甘さを強く感じる、暑いお茶より冷たいお茶の方が苦みを感じやすいのはこういったカラクリがあったからなんですね。
これらのことから、私たちが美味しいと感じるのは体温と関係が深く、「冷たいもの」か「温かいもの」の二極化していることがわかります。
しかし、私たちの体は37℃前後で十分な機能を発揮できるようになっているため、冷たい飲み物が大量に入ってくると、内臓が冷やされるだけでなく、各消化器官にいる消化酵素が効率的に働くことができなくなる可能性があります。
具体的には、冷たい水分が体内に入ると、まず最初に胃が冷やされ、血管が収縮することで、消化管の運動が妨げられるのです。
その後、十二指腸・小腸と流れ、体内に水分が取り込まれますが、冷たい水の場合、血管が収縮し血流が悪くなったり、消化器官の働きが低下します。
この状態で食事を摂ると栄養素を十分に吸収できなくなる可能性が…。
消化吸収が悪くなると、食欲が低下したり、手足の冷えや体のだるさ・むくみといった夏バテにもつながります。
また腸が冷えることで腸内にいる免疫細胞の活動も低下し、感染症へのリスクも上がることが考えられます。

さらに夏の時期は、発汗や体温調節のため血液が体表を流れることが多く、体の深部である胃腸は流れが少なくなってしまいます。
この状態で冷たい飲み物を一度に大量摂取すると、胃腸トラブルを引き起こしかねません。
冷たいものを摂るとお腹がゆるくなってしまう方がいらっしゃると思いますが、これは冷たいものが胃に入ると反射的に大腸が収縮して、血流が悪くなり消化不良を起こすだけでなく、腸の蠕動運動の活発化も起こるためと考えられています。
冷たい飲み物は温かい飲み物に比べ、水分吸収が早いので乾きが満たされる感覚があったり、体の上部が熱を感じる冷えのぼせ状態が起こっていて冷たいものを欲していたり、それまでの長年の習慣も大きく起因しているため、中々水分補給の仕方を変えづらいという方も多いでしょう。
冷たいものが好きだと思っても、温かい飲み物を摂るように意識を変えてみると、からだの調子が変わってくるかもしれません。
特に氷をたくさん食べたくなる方は、「氷食症」とも呼ばれ、口の中の温度が高く、喉が渇くことで氷が食べたくなるような癖や行動を指します。
まだまだ解明されていない部分も多いですが、鉄欠乏症貧血などの状態に見られることがあるようです。
冷たいものを食べたときの頭痛と対処法

暑い日にかき氷やアイスを食べて、頭が痛くなる経験は多くの方にあるものです。
英語でも「Ice-cream headache」と呼ばれ、国際頭痛学会では「寒冷刺激による頭痛」に分類されています。
冷たいものが口に入ると上顎の近くにある、顔の感覚を支配する「三叉神経」に刺激が届きます。
この刺激によって発生する伝達信号が脳に届くことで、痛みと勘違いして頭痛が生じるそうです。
また、冷たいものを口にいれると口の中や喉が冷え、この冷えた状態を回避するために頭につながる血管が膨張し、血液量を増やして温めようとすることから頭痛を誘発していると言われています。
このアイスクリーム頭痛を避けるには、急いで食べるのではなく、ゆっくり時間をかけて食べることと体を冷やしすぎないよう温かい飲み物を一緒に飲むことがおすすめです。
またアイスクリーム以外にも、お刺身や生のサラダも急激に体を冷やす可能性があるので、食べ方には注意しましょう。
冷たいものを摂りすぎると起きる体調不良は頭痛や腹痛以外にもあります。
世代別に表にまとめたので、ぜひ確認してみてください。
夏場の冷えには温かい飲み物

温かい飲み物は体全体を温め、内臓も温まるため、胃腸の消化吸収が向上し、むくみが改善したり排便の促進が期待できます。
体温が上がると免疫力も向上し、消化酵素も活発に働くと言われているので積極的に温かい飲み物を摂るようにしましょう。
また日本には昔から「暑いときこそ熱いものを」という考えがあります。
これは暑いものを摂ることで発汗を促し、結果的に体温を下げるという効果を期待したもので、暑いからといって冷たいものばかり摂ることは良くないという考えが根付いています。
もちろん目もくらむような炎天下や湿度の高い状況で熱いものを飲んだり食べたりすることは熱中症につながるので注意が必要です。
では具体的にどういうものを摂ればいいのでしょうか。
身近なところで言えば、夏に冷たい麦茶を用意するご家庭が多いかと思いますが、室内の冷房などで体が冷えている時などは、常温か温かい麦茶に変えてみるのがおすすめです。
カフェインには利尿作用があり、血管を収縮する働きもありますが、麦茶はノンカフェインで妊娠中や授乳中のお母さんや高齢の方まで安心して飲める飲み物の代表。
また麦茶にはカリウムが含まれており、血管を拡張させることで血圧を低下し、体の熱を体外に排出してくれる効果があります。
他にもカリウムが多く含まれるお茶の原料としては、たんぽぽ根・ペパーミント・ハトムギ・カリン・ジャスミン・カモミール・月桃葉といったものがあります。
お茶は温めることでより香りがたちます。
リラックス効果も期待できるので、ぜひ試してみてください。
他にも生姜湯・ゆず茶・甘酒、ハーブやスパイスが入った飲み物や香辛料・香味野菜・酢を使った料理は血行を促進し、食欲も出て発汗作用があるため夏バテを回避するのにはぴったり。
お隣、韓国では暑い日に参鶏湯を食べる習慣があるそうで、ほろほろの鶏肉・もち米・高麗人参にナツメやネギが入った滋養食を食べることでじんわり汗をかいて夏を健康的に乗り切る風習のようです。
参鶏湯のように、温かいスープは煮ることで野菜の嵩が減り、生野菜よりも効率よく食物繊維が摂取できるだけでなく消化もしやすくなります。
塩分は控えた味付けにし、食事の前に摂ると早食い予防にもなりますし、十分な栄養が入ったスープを摂ると脳が飢餓状態と感じることがなくなるので、おやつを欲することも少なくなるとか。
近年では、健康を意識して白湯を飲む方も増えていますよね。
白湯も体を温めるためにはいい習慣ですが、ノンカフェインで体に嬉しい栄養素が入っているスープやお茶なら、より香りも豊かで美味しく、楽しみながら温活できるのでオススメです。
また、夏におすすめの温かい飲み物がお味噌汁!
大豆を原料とするみそ汁は、夏バテ予防に必要な栄養素が豊富に含まれるほか、不足しがちなミネラル・水分も同時にとれる優れもの。
不足しがちな栄養素も具材で補うことができるので、ぜひ食事に取り入れましょう。
どうしても冷たいものが飲みたいとき

ここまでの話を聞いていて冷たい飲み物より温かい飲み物の方が体にいいと知っていただけたかと思います。
ですが、身体が火照ったり、どうしても冷たいものが取りたくなった時は、どうすればいいでしょうか。
一気飲みしない、量を少なめにする
一度にたくさんの冷たいものが体内に入ることで体は冷えます。
なるべく氷少な目や氷無しを選択するのもよいかもしれません。
温かいものを交互に飲む
体が冷えないことが重要なので、温かいものと交互に飲むことで体温を下げすぎないように注意しましょう。
体を温める効果のあるものを摂る

体を温めることで知られている生姜ですが、生のものは「ジンゲロール」、加熱すると「ショウガオール」という成分が多くなります。
「ジンゲロール」には発汗作用があり体温を下げることになりますので、加熱したものを選びましょう。
その他にも唐辛子、たまねぎ・柑橘類・梅干し・青魚・ナッツ類・緑黄色野菜、タンパク質、根菜は体を温めてくれます。
これら以外にも腸内環境を整えたり、運動・入浴・睡眠で自律神経バランスを整えるのも大切です。
意識を少しずつ変えて、習慣を変え、続けることで日々のセルフケアに繋がります。
例年、猛暑が予測される夏は、熱中症などの暑さ対策にも気を付けながら、冷えによる夏バテ予防も意識したセルフケアで、快適に過ごしましょう。
冷たいものに頼らず体を冷やす工夫

冷たいものを欲するのは、体温が上がっているサイン。
でも、内臓を冷やしすぎると胃腸の働きが鈍くなり、かえって不調の原因になることも…。
そこで、冷たいものに頼らず、無理なく体を冷やす方法をご紹介します。
手を流水で冷やす
手のひらや手首には血管が多く集まっており、冷水で冷やすことで体温を効率よく下げられます。
内臓にも負担をかけることなく、仕事中や家事の合間にもすぐ実践できる一番手軽な方法です。
首・脇・太ももの付け根を冷やす
太い血管が取っている部位を短時間だけ冷やすことで、体全体の熱を下げる効果があります。
保冷剤や濡れタオルを使いつつ、冷やしすぎないよう注意しましょう。
特に保冷剤などは直接肌に当てず、タオルなどで包んで使うといいですよ。
エアコンの使い方にも工夫を
室温は28℃前後を目安に!
よくエアコンの温度を28度と思っている方がいますが、快適に過ごすもみ大切なのは室温が28℃前後であることです。
また、エアコンの風が直接当たり続けると必要以上に体を冷やしてしまいます。
風邪が直接当たらないよう調整し、扇風機などで空気を循環させると快適に過ごすことができるでしょう。
まとめ

今回は冷たいものを多くとりすぎると体に悪影響を及ぼすという点を知っていただけたかと思います。
冷たいものは暑さをしのぐため必要不可欠ですが、摂りすぎて体調を崩しては本末転倒です。
体を冷やすことは悪い事ではありません。
ただ一気に冷やしすぎないよう、ちょっとした工夫で残りの暑い時期も元気に乗り切りましょう。
